ボール支配率を上げることでゲームを自軍に有利な展開を作ること。
・メリット
ボールを支配しているので相手に攻撃権がないこと。常に自軍が攻撃可能なこと。
一般的な説明は上記の通り。では何故ジュビロのポゼッションは上位チームに機能しないのか。
ポゼッションとは「ボール支配による間接守備」が本意。メリットである「相手に攻撃権がない」という部分を生かした「守備」という部分が重要。しかし、この解釈ができずに「攻撃権を持ち続ける=攻撃サッカー」という解釈のみに固執するとデメリットの出る運用に向かってしまう。
攻撃権を持ち続ける=常に攻撃できる。という単純解釈から攻撃サッカーという部分に固執すると何故上手くいかないのか。
まず、ゲームの中の状態を理解する必要がある。
1.ボールを持っている=攻撃側
2.ボールを持っていない=守備側
とまず解釈するのだが、
では、
1.ボールを持っているので相手は攻撃できない
2.ボールをもっていないがボールは敵陣のゴール正面、ゴール付近にある=自軍がボールを持っていないだけでボール自体の位置は攻撃した時と同じ
と異なる角度からの解釈ができる。
2.についてはわかりやすいが、プレスディフェンスからのショートカウンターの概念はこの2.の解釈から類推することができる。つまり、ボール自体を持たなくても高い位置からプレッシャーをかけてボールをロストさせてしまえば攻撃権はフリーの状態になる。このボールを高い位置で回収できれば即、攻撃可能になりビルドアップの必要性がなくなる。これがハイプレスからのショートカウンターの論拠である。
同じように1.を考えると、「ボールを持った守備」という概念になる。ボールの支配権は自軍にあり、相手は攻撃不可能。よってこれは守備である。
しかし、重要な点はここから。ボールを持っていても「攻撃」だと考えているチームはシステムをビルドアップにしてしまう=守備のシステムではない、状態に移行する。このことでボールは持っているが状態は攻撃状態=ビルドアップになっているので守備に向いたシステムではない。このことがハイプレスに対して弱い状態を作り上げてしまう。
守備はプレスかブロックかに分かれる。つまりボールを持った状態でもゴール前を固めてゴール正面のエリアでボールを持たないことでロストからのカウンターリスクを考えた持ち方、システムを採用しているのか、もしくはボールロストした時にプレスによる即時奪回のできるシステムを採用しているのか、ということ。
ボールを持っている時にそれが「攻撃」なのか「守備」なのかをはっきり切り替えられているか。システムがどちらにも対応しているのか、システムを利用して攻撃が機能しているのか、という部分が重要になる。つまりフォーメーションの変化、可変システムというのはポゼッション的には微妙で基本フォーメーションの状態でそのまま守備と攻撃がマッチした形であるのが望ましい。フォーメーション=戦術であるのが一番わかりやすい。
3421のフォーメーションは3バック、WB+DH、OH、FWの4ライン制。サイドの高い位置にWGやSHがいない為にWBが上がる必要がある。しかしWBが上がると3バックの脇が空いてしまうのでカウンターに弱い。このことを考慮するとWBは上がり過ぎないプレーが求められてしまう。
3421のフォーメーション自体は3バックで中央を固める。WB+DHの4人ラインでパスを切る。OH+DHのボックスで中央を締めて固める。というブロック守備のスタイル。一方で攻撃はFW+OHの3人による中央攻撃の速攻が合理的。問題点はサイドの高い位置に選手がいないので守備時にSBをフリーにしがちになってしまい、SBからのアーリークロスが入りやすいこと。その為に3CBやDHには高さ、堅さ、回収後のドリブルでの持ち上がりなどの能力が必要になる。サイドの高い位置は直接脅威度も間接脅威度も低いエリアなのでボールの逃げ場所になりやすい。ブロック守備の場合だとどうしてもそこまで手が出せない。プレス守備の場合は前から当たっていくのでサイドの高い位置へのマークは必須になる。
2017ジュビロが上位に入ったのはフォーメーションと戦術がマッチしていたため。しかし今はそうではない。
世界的にポゼッションが廃れた理由は「引いたブロック守備で守ればカウンターで仕留められる」ということ。ポゼッションの攻撃面での考え方はボールを奪いに来ることでブロック守備をプレス守備に変更させてブロックを自ら崩させ、そこに出来たスペースに人もボールも動いて小さな隙を突いていくスタイル。しかし小さな隙というのはワンタッチの攻撃が必須。止めて蹴るという基本スタイルは狭い場所では時間がかかりすぎるのでプレスに囲まれてしまう。トラップする場合はわざと大きくトラップしてスペースに置いたり自分の体をスクリーンにして逆に置くなどのテクニックを使ってキープする必要がある。しかしそれも時間がかかる。時間がかかるとプレスはより強くなってしまうのでいかに時間を使わないでパスをつなげるかというのが大事になる。プレス回避にはワンタッチでつなげることが大事。相手がブロックを崩さなければポゼッションは攻撃の意味合いが薄れてしまう。
ポゼッションはパスをつなぎ続けないといけないという大きなデメリットがある。なのでそのパスがつながるような陣形を採用しなければならず、かつロスト時に即時奪回できるか危険なゴール前エリアを避けた位置に誘導できるのかが重要になる。それが予め準備されていないフォーメーションではボールロスト率は高くなる。ボールロストが多ければそれだけカウンターの確率は高くなる。
・逆カウンター
ポゼッションにおける攻撃の一つには逆カウンターがある。危険なショートパスをつなぐという方法論を止めてロングボールによる相手背後の攻略をする手法。ボールをあえて自陣のブロックで回しながら相手のプレスを引き出して背後をカウンターで狙う。ポゼッションを攻撃=ビルドアップと認識するのではなく、守備=ブロックとして認識しているのでロスト率も少なくロストしても既にブロックが形成されているので守備での問題はない。ボールを持ったカウンターなので相手がプレスで前のめりになってくれば背後に大きなスペースができるのでそれを速攻で突くのが逆カウンター。2021ジュビロで遠藤がいない時に使われた手法。FWが速攻できる選手である必要がある。
・可変システムの問題点
可変システムは柔軟性はあるがポジションの移動という時間が発生する。これは局面が変わるトランジッション時に大きな隙を生み出すことになる。3421でWBが攻撃参加した時の背後のスペースはその大きな例。3バックの弱点である脇を突かれることで失点確率が上がる。現代サッカーにおいてトランジッションは非常に重要なファクターなので可変によってデメリットが大きくなる場合は再考する必要がある。
・サイド攻撃
3421とサイド攻撃は合わない。そもそもサイドがWB1人の上に3バックの弱点が丸出しになる。WB1人が上下動する時間はトランジッションにおける大きな隙になる。それも含めて可変しているが清水戦ではそれで失点している。WBが5バックで引いた状態でOHがサイドに開いてサイドの高い位置でプレーすると中央に守備の弱いボランチが残されるだけになりカバーのCBの負担が大きくなる。
・相手の守備
自軍がポゼッションだとして、相手がプレス守備なのかブロック守備なのかでどう攻めるかは異なってくる。プレスなら回避しなければならないのでロングボールを入れて回収するようにこちらがプレス守備に移行する逆プレスによる攻めを選択できる。ショートパスによる回避でプレスを回避する方法論もあるが選手のテクニックがチーム全体で高くないとロスト率が高くなる。逆プレスの場合は中央の選手の強度が高く回収率が高い必要性がある。プレス守備だとブロック外周でボールを回すだけになりがちだがミドルシュートを積極的に撃ってこぼれ球を押し込む攻めを選択できる。ポゼッション=ショートパスだけの選択肢では相手に合わせて合理的に攻めなければ得点には至らない。
・環境
パスサッカーの重要な要素に環境がある。第一節でも第二節でも雨や水撒きやピッチの芝の長さや荒れ具合のせいでボールが走ったり止まったり影響を受けてしまう。ロングボールは風の影響を受けやすい。ヤマハの芝や環境が良すぎるせいでパスサッカー思考になってしまうと他のスタジアムでは力を発揮できなくなることになる。影響を受けにくい戦術を使うのは重要なこと。上手く利用するを考えて足を引っ張るような要素はできるだけ排除すること。
ジュビロはそもそもパスサッカー出来るほど上手くない。というかパスサッカーやるにはいろいろな条件が多すぎる。ポゼッションの解釈やシステムとの調和性、攻撃のスタイルとのミスマッチ、中央の守備の弱さなど攻撃の最大化だけを求めただけでリスク管理が全くなされていない。楽観主義的な思考で前向きになるのはいいがそれだけで結果が生まれるわけではない。むしろ楽観的過ぎなくらい。J1残留すら危ういレベル。
2022のJ1は去年の4チーム降格によって弱いチームはほぼふるい落とされた選抜済み。その中で残留争いし続けた清水の1.5軍に先手を取られてボールを持たずにコントロールされていた時点で残留争いも厳しいと考えた方がいい。福岡戦にしても清水戦にしても得点時のラッキーさがある。しかしそれはいつまでもつづくわけじゃない。むしろ34試合の少ない試合数の中でより鮮明に実力が表れてくる。偶然は何度もつづかないし結果に対して偶然は誤差の範囲。2試合で勝ちなし、失点3ははっきり言って厳しい。
0 件のコメント:
コメントを投稿