2020年9月21日月曜日

ジュビロ磐田徹底分析

◆サッカーの特徴

1.足と頭でボールを扱う為技術が必要

2.ピッチが広く11人ですべてをカバーできない

3.オフサイドルールの存在


サッカー自体の特徴としてボールを扱うスポーツだが足と頭で扱って手を使えない特殊なルールであること。これによってボールを扱う技術の高さが必要になる。

ピッチの広さは11人全員で守備できない。かならずスペースができるので、攻撃側守備側共にこのスペースを意識して戦術を作らなければならない。オフザボールでのスペースへの侵入、スペースをパスコースとして使う、ドリブルによるスペースの利用。

オフサイドルールはボールポゼッション側が不利なルールであり、ボールを保持しない守備側に有利なルールである。これがカウンター戦術を構築する上で非常に重要な「戦略級」の価値のあるルールであるという認識を持ってもらいたい。


◆究極の攻撃サッカーはカウンター

攻撃をリスク:リワードで考えてみると、究極の攻撃は

リスク 0:リワード 10

リスクを掛けずにリワード=得点を得るという選択だ。

ではその選択は可能なのか?

答えはYES

6-0で勝利した金沢戦。ジュビロはカウンターによって複数得点を得ている。

ではなぜそれが可能だったのか?

カウンターとは守備からスタートして相手の攻撃の芽を潰しつつボールを奪って得点する。というイメージがあるが、リスク0の攻撃とは、「相手にボールを運ばせる」ということ。

この意味は「オフサイドルールの穴」を最大限に利用する、ということでもある。

オフサイドルールの穴とは、ボールポゼッション側がバックパスをした時は、守備側のFWがGKと1対1であってもオフサイドにはならない。

オフサイドルールには2つの条件があり、1つはオフサイドポジションの選手がプレーやGKに干渉する事、もう一つが味方選手がそのオフサイドポジションの選手にパスを出すことである。

つまり、ボールさえ保持していなければ、守備側の選手はGKに対して干渉できるということ。

「敵のバックパス = 味方の縦パス」

ということ。

これを理解すれば、守備側は最終ラインへの同時プレスから「バックパスを誘発」してロストもしくはGKへのプレスで得点するチャンスを得ることが出来る。

守備側はボールホルダーに対して縦パスコースを切って横パスバックパスのコースのみを開放しておく。横パスバックパスと同時にプレスを強行すると敵はボールを前に進められなくなり、かつ人数の少ない後方へとバックパスをせざるを得なくなる。

ボールを奪うのは最後だけであり、相手自身にボールをゴール前まで運んでもらう。これがカウンターの神髄。リスク0:リワード10のカウンター戦術。

ボール保持チームがGKまで戻して放り込んだとしても、3バックがオフサイドトラップを使って取り返す。つまりオフサイドトラップは「攻守においてボールを保持しないチームに2重に有利に働く。」これが「オフサイドの戦略的価値」である。

これを理解していれば、ボールポゼッションというまやかしのデータに踊らされることはない。オフサイドルールは守備側が圧倒的に有利なルール=武器ということだ。



◆データの沼に囚われているジュビロ

ポゼッション率とパス本数というデータに翻弄されているが、カウンター側からするとどれだけボールを保持されていても、パス本数が多くても、ゴールに絡むボールが少なければ脅威ではない。サッカーはパスを回す競技ではなく、得点によって勝敗が決まるスポーツ。つまり内容はどうでも良くて結果がすべて。パスの美しさを競う競技ではない。ゴールに絡むパスの本数と枠に飛んだシュート以外を集計してもそれは屑のデータに過ぎない。


◆古いポゼッション戦術をアップデートできない

442のポゼッションスタイルは攻撃時に2CBのみになりバックパスがゴール前中央に集まってしまう。これがカウンター側にとっては非常に好都合。よって442のSBが上がって2CBが中央に残る形は旧式であり、攻撃時のネガティブトランジションをマネジメントできていない。ボランチがCBに降りてくる形で攻撃時3バック化して対処するもしくは片側のみを上げた形の3バックにすることで解決は可能。


◆ジュビロスタイルと弱点

1.サイド重視 = 中央制圧できない、ゲームコントロールができない、戦力が分散する

2.攻撃重視 = 守備に必要な選手の少なさ、守備強度の低さ

3.テクニカル重視 = フィジカルの弱さ、スピードの遅さ

4.ポゼッション重視 = ボール保持優先による目的と手段の入れ替わり、ボールロストのリスク上昇


ジュビロのスタイルは全て「回避」に特化している。

サイド = 中央の回避

攻撃 = 相手側コントロールの回避

テクニカル = フィジカルの回避

ポゼッション = 敵の攻撃権取得の回避


「戦わずに勝つ」といかないのは相手のストロングポイントを回避してもジュビロ自身にストロングポイントがない。自分達のフォーメーションや戦術にこだわり相手のウィークポイントを狙えない。

テクニカルの利点は柔軟に相手に合わせてウィークポイントを突くこと。ジュビロはそれが出来ない。

自分達の武器とその使い方を理解していない。



中央の制圧は基本中の基本で超重要な要素。

まず中央=CHもしくはDHでフィジカル重視を置くこと。

これは中央攻撃、セカンドボール奪取、戦況のコントロールと多面的に関わってくる。

中央の人数、強度はそのチームが試合をどれだけコントロールするかに関わる。


ジュビロのスタイルはオーソドックスではない。

むしろ「超特殊」なスタイルとも言っていい。

テクニカルで遅いサイド攻撃特化は超特殊なスタイル。

そもそもこのスタイルが有効でないのは何年にもわたってジュビロ自身が体現している。


サイド重視の弱点は戦力の分散と孤立による連携の断絶。

中央制圧、支配が出来ないので常に後手になることと、ゴールに最短の中央攻撃ができないこと。

自分から難しく不利な後手を選んでいる点。

しかも遅攻なので相手の守備が固まっていることを前提とした条件でスタートしなければならない。


つまり「ジュビロのスタイルは全て自らを不利にしている」ということ。


まずこの状況をハッキリと認識するべき。

何年やっても成果がでない、むしろ下がるばかり、という理由は「根本的に、戦略的に間違っている」ということを全く認識していないということ。


逆に2017のJ1で6位まで上がった時のスタイルは361で、

中央重視、守備重視、フィジカル重視、カウンター重視と真逆のことをやっている。


ジュビロ考えるスタイル自体がそもそもの問題点。

いつまでたっても全く認識していない。


◆442のポゼッション遅攻

このスタイルの問題点は、サイドに4人が配置され中盤中央が2人のCHかDHのみ。

しかもボランチ、DHとしての配置になるので下がり気味でセカンドボールへのアクセスで一歩遅れることで後手を踏んでいる。よってセカンドボールを先に取られてしまう。

サイドに4人いてもSBは守備強度の低い小川や宮崎などで攻守に機能が低い。SBの守備強度が低く攻撃では支援のみなので攻守に微妙な弱い駒に2人を配置してしまっている。SBが守備が出来なければ2CBのみとなるので守備の弱さが際立つ。

SHもDHが低い位置にいるので単独でサイドを攻めなくてはならない。SBも上がってこないので連携もできない。そもそも442は縦横の重なりが強くてパス連携にしてもドリブルにしても連携しにくい配置になっている。ソリッドな守備からのロングカウンターが442の基本運用なのでポゼッションで使えるフォーメーションではない。

パスを回したいならもっと斜めにずれたフォーメーションを使うべき。


◆ジュビロスタイルが実用的になれるかどうか。

1.サイド重視 = ワイドではなく、ハーフスペースを重視する、ワイドはオーバーラップで使う、中盤ワイドは起点として使う。センターレーンを使わずワイドとハーフスペースを縦に使う。

2.攻撃重視 = 遅攻ではなく速攻、ハーフスペースを使う。

3.テクニカル重視 = ピッチ全体を広く使いコンタクトを少なくし、ボールを走らせる。

4.ポゼッション重視 = サイドチェンジではなく、楔とスルーパスの縦の長短パスを使う。

ジュビロの選手は攻撃型で守備強度の低い選手が多いので3バックを採用する。サイドはWBかSBで守備と長いパスが出せる選手。中盤はハーフスペースからの攻撃をするのでIHかCHタイプ。縦に走って攻撃が出来るタイプ。

他のチームは対ジュビロ戦では中央をソリッドに守備することでパスを回させておくことを選択している。サイドチェンジとポゼッションは脅威ではない。


◆ジュビロの伝統、ストロングポイント

1.3バック

2.中盤の構成力

3.FWの決定力


ジュビロは352をベースにした堅い守備力を活かしてそれを攻撃力に転化できること。

ショートカウンターベースがジュビロの伝統。

352の延長として361の導入、ロングカウンター用の541までできている。

問題点はポゼッションのみ。相手がロングカウンターで引いた状態でジュビロがボールを持たされている状態の時にどう攻めるのかという部分。フベロ初期では442のハーフコート状態で封鎖したクローズドの状態でボールを保持して攻撃を続けていたが、カウンター時は2CBのみで非常に脆い守備だったので勝ち点を落とすこともあった。J2ではカウンターチームが多いのでロングカウンター対策のポゼッションは必須。フベロ初期の442ポゼッションを352、361、531またはその派生で書き換えた形をトライしてみたい。


◆ポゼッション2.0の構築

ポゼッションにはショートカウンター

ショートカウンターにはロングカウンター

ロングカウンターにポゼッション

ジュビロはショートカウンターとロングカウンターは出来る状態にある。しかしポゼッションは上手くない。ジュビロは逆にポゼッションが不得意。より低リスクかつ高リワードのポゼッション方法を考える必要がある。サイド攻撃は低リスクだがリワードは高くない。中央攻撃はリワードが高いがリスクも高い。するとサイド起点の中央攻撃がリスクとリワードのバランスが良い方法となる。つまりSHSBから斜めにPAに入る形。しかし相手のブロックが442のようなソリッドな形だと上手く行かない。斜めに入るというのはそれだけ距離があるので最短というわけではない。逆に距離が出来ることで相手の守備にさらされる時間が長くなるという事。


◆WB/SBの誤用

WBは将棋の香車、SBはチェスのルーク。どちらも縦に攻撃できるが基本はポジション位置によるスペースを埋める守備であり、攻撃は「控え」である。またその攻撃は長距離のパスがメインでドリブルの持ち上がりはブラジル式。ブラジル人の走力体力があってこそ。しかもブラジル人はWB/SBに一線級のエリートが鎬を削るポジション。日本のSB人材は二線級でありブラジルとは比べられない。WB/SBを攻撃的に使う「前提」はこちらの攻撃が戦況を掴んでいる状態。相手が引いてWB/SBの守備機会が少ないタイミングで前へ出るのが基本。特に1人のみのWBは攻撃のタイミングが非常に重要になる。SBの上がりの前提としてSHのインサイド化がある。SHがPA内でのプレーをすることでSHのポジションが空きSBが上がるスペースができる。SHがサイドにいたままだとSBのオーバーラップがしにくい。幅を使った攻撃の場合はSHがサイドに開いたままSBがインナーラップでハーフスペースを上がって中央攻撃に参加する形がある。

ジュビロはWB/SBにブラジル式を求めてしまっている+控えではなくサイド攻撃の中核と考えて活用している。その為に相手のサイドへのカウンター攻撃に非常に弱い負の伝統がある。またサイド攻撃を主体としてしまうためにSHがインサイド化しない為にSHとSBが重なって渋滞になる。同時にSBの上がった状態で2CBなので守備が薄くなりカウンターに非常に弱い。

ドリブラーを入れるならWB/SBよりむしろSHに置くべきで、藤田俊哉、奥大介、松浦拓哉などPA内でのドリブル勝負が出来るようなタイプを置いた方が良い。しかしジュビロ的には西紀寛や川口信夫のようなサイドを縦に走るドリブラータイプを置きがち。WB/SBのドリブラーは全く脅威ではない。むしろ守備ポジションを放棄して守備の穴を空けてくれる絶好の鴨。しかもそれを序盤から勝手にやってくれるチームなんだからカウンター側からすれば非常においしい相手と言ってもいい。逆にSHにドリブラーを置いてPA内に侵入してくる相手ほど嫌なものはない。守備陣形が崩れる上に放置できず、さらに背後からSBが侵入してくるからだ。守備側からすればジュビロの布陣は非常にやりやすいと考えていい。つまりジュビロの考えている戦術は非常に低いレベル。基本を理解せずに形を真似ているに過ぎないから劣化コピーしか作れない。基本と本質を理解すれば誤用はしない。使うべきタイミングも間違えない。必要な連携も構築できる。


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