2024年2月26日月曜日

神戸戦戦術振り返り

ひとことで言うと「玉砕」という感じ
神戸は4-3-3だが中央は3ボランチ編成という超攻撃的守備(ボールハント専門)という構成
前年トップリーグ王者の計算しつくされた戦術に正面から突っ込んで奮戦し玉砕した、という感じ

決して全てに駄目だったというわけではない、強度的には相手と対等とまではいかないが応戦できる部分もあったと思う、これだけでも成長した部分はある

神戸の陣形、運用自体が対ポゼッション戦術の最高到達点=トップリーグ王者なのに対して他力自動昇格の無策ポゼッションが正面からがっぷり四つ相撲組んだわけだから勝つわけがない

掲示板にはポゼッション下手、足元下手、などと書かれているが、上手ければ回避できたのか、というとそれも難しいと思う

ダイジェストから、2点目の失点シーン付近の神戸
https://youtu.be/XAhipxETA0M?t=219

ヤマハの芝目は5.5mなので3つ分=16.5m程度の範囲に3ライン(DF,MF,FW)を圧縮している
更に両サイドいっぱいに配置されているので各レーンに人が必ずいる
DFとFWが4人と3人で前後にラインを形成して封じ込め、その中間のエリアを3人のボランチがボールを奪いまくるという四角いジャングルの中のタッグマッチのような状態

中盤3枚のプレスをかわそうとサイドに逃げてもWGとSBが待ち構えているので出口を封鎖されている状態で逃げ場所がない

むしろ中盤3枚にサイドに追い込まれるとサイドのWGSBとの挟み撃ちで5枚に囲まれるというN-BOXもビックリな仕掛けになっている

N-BOXは縦列に並べてサイドに追い込んでいったが、神戸は横列でこれをやっているような状態、選手のいるゾーンを限定圧縮して密度を高めている分、前後のスペースが広い、本来はここが弱点になるので、広大な裏へのスペースに向かってどんどん走り込んでDFラインを下げさせることで中盤3枚の圧力を逃がすスペースをまず作る必要があった

数度だけジャーメインへのボールからチャンスがあったが決めきれなかった
本来はこうした「枠シュートに行けたシーン」を再現していくことが得点への近道になる
相手がそれを対策しようとしないならそのまま枠に打ち続ける事が出来るし、対策し始めたのなら他の場所にほころびが出来始めたという事

神戸の圧縮されたエリア内でのプレスという局地戦に付き合ってしまったのが非常に残念
神戸の思った通りの展開にされてしまった
もちろんそれを破ろうとトライした部分はあるだろうが、神戸はそうした「対策の対策」まできちんと用意できていたのだと思う
こうした戦術の準備の差が選手の質や強度といった部分以上に致命的だっと感じる

神戸は4-3-3の弱点が中盤サイドであることも承知した上で選択、前後ラインの圧縮によって弱点となるエリアを極端に小さくすることでリスクコントロールしつつ、同時に中盤3枚の中央からサイドへのプレス誘導によってWGSBを含めた5人で囲んで奪い取ることが出来た

中央なら2CBを含めた5人で囲めるので中央サイドのどの場面でも5枚を作れるのでそれは良くできた戦術だと思う、普通にN-BOXのような王者の戦術を仕掛けられたという思いの方が強い

やはり対策としては裏への速いボールと飛び出しを何度も行う事、ジャーメイン一人ではなくスピードのある選手が両サイドに入って3人でラインブレイクを狙って何度も走れるスタミナがあること、まずこれで相手のDFラインを下げさせる
DFラインが下がると中盤3枚のプレスをかわせるスペースが出来たり、バイタルに落ちるボールを回収しやすくなるのでここはリスクを追って裏に何度でも蹴り込む必要があった
神戸の戦術はN-BOXと同じで局地戦エリア構築タイプなのでN-BOXの弱点がエリアを作れないサイドチェンジであったように、神戸の横列タイプの場合は背後の広大なスペースだった

神戸戦は強かった時のジュビロ自身だと思えばいい、あれが強い時のジュビロ、まさしく何もさせてくれない、ジュビロは本当にこのくらいの強さだったわけ、神戸の戦術の核はN-BOXと同じ

N-BOXより守備的な横陣を選択していることで失点確率はかなり低い、特に地上戦型のポゼッションに対しては絶大な威力を見せる
そういう戦術にほぼ無策で突っ込んだとしか思えなかった

試合全体全て神戸がコントロールしていた、ボールを持たせられて、神戸が勝ちを確信して引いたタイミングくらいしかほぼ攻撃的な部分を見ることが出来なかった

やはり1トップ、ジャーメイン単騎の裏狙いだけでは全く無策に近い、彼のスピードとスタミナは認めるが1トップの弊害、2列目が繋ぐタイプ、受けるタイプだと裏に走れないのでどうしても攻撃が単発に終わってしまう、こうなると神戸は簡単に対策出来てしまう
中央両サイドのどこがラインブレイクしてくるのかがわからない、という状況を作らなかったのでマークはラインブレイクしようとする1トップだけでよいのでタイミングは簡単に取れる、マテウスの1トップによるオフサイドも同じこと
神戸は裏狙い対策にオフサイドを使っていたのでやはり裏狙いのターゲットを分散しなかったことでオフサイドトラップを簡単にさせてしまった

相手の戦術への理解度、相手の戦術への対策、対策の対策への対策、など戦術は将棋やチェスの様に局面の打開、その応手、というやり取りで成り立っている
自分達のサッカーだけを突き詰めれば強くなる、というものでは決してない

ちなみになぜカウンターの方が強いのかは合理性の問題
カウンターはゼロからスタートする、つまりボール非保持からのスタート、よって奪うというプロセスによってゼロを1に変える、一方でポゼッションは1からスタートし、ボールをロストすると-1されてゼロになる、その時にこのゼロを1に戻す手段を持っていない、ポゼッションはゼロを嫌い1を1のままにしておこうとする戦術、しかしサッカーに確実というものは存在しない、むしろ偶然や偶発という不確定要素で成り立っているのがサッカー、よってポゼッションはその思想の根幹自体、自立不可能という結論になる

このブログで何度もカウンターが出来なければポゼッションは出来ないと言っているのも同じこと、カウンターが出来る=ゼロを1にすることができる、つまりポゼッションからロストしてもまた奪い返すことによってポゼッションに戻す事が出来る、こういうレジリエンスを戦術的に構築できていないポゼッションはその時点で役に立たない、カウンターが出来るチームこそポゼッションができる、ポゼッションしかやらないチームは決してカウンターのチームに勝つことはない

ポゼッションをやりたければまずカウンターが出来る事、これが理解できないうちは何やっても上手くいきません

物事の合理性を突き詰めて考えることが出来ないから同じことをやって間違え続ける

ポゼッションとカウンターの違いはボール保持からのスピードに過ぎない、速攻か遅攻か、より長く持つか、後で奪い返せば良いか、の違いに過ぎない、なので、どちらにしても第一条件は「ボール奪取」を構築すること、つまり「奪う守備」の確立が大前提、ここを理解していないとポゼッションは永久に成り立たない

ボールロストからのゲーゲンプレス(カウンタープレス)だけでボールが奪えるのかどうか、という部分はポゼッションするチームに置いての問題点、その点、カウンターチームでは守備をセットしている状態で奪いに行けるので応急的なボール奪取とは話が違う
つまりカウンターはより正確かつ確実にボール奪取をおこなうことができるということ
トランジッションの中でどうにかしようというのは下準備が流動的なので運用としては難しい、その点最初から奪う守備で構築されたブロックで待っていればより確実にボールを保持できて攻撃に繋げられる

カウンターの利点は自軍がボールを奪ってからのポジティブトランジッションで攻撃に移行できること、この点がポゼッションのボールロスト時のリスク管理より大きなベネフィットが得られやすい状況になっている、相手が攻撃してきたタイミングを狙うので相手の守備状態はかなり薄く弱いので同数で戦えば得点できる確率が非常に高い、一方でロストしたポゼッション側はリトリートするかカウンタープレスで少ない数で応戦しなければならい

こうした合理性を基にしてポゼッションを捨ててカウンターに移行して王者になっているのか神戸ということ

「俺たちのサッカー」的なメルヘンを追うのではいつまでも王者に戻ることはない

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