2025年6月5日木曜日

ビルドアップとロングボール

現在のジュビロの戦術はビルドアップ+ロングボールなわけだが、この意味がまだ理解できないビルドアップorロングボール派がいる

ジュビロの戦術上、ビルドアップとロングボールは「同じ戦術」である

やっていることが違うのに何が同じなのか、という疑問が出てくるわけだが

そもそもその前段階として「どのような状況なのか」という部分が抜けている

これは相手の戦術との駆け引きの中で高度に戦術化されたものなのでビルドアップとロングボールが戦術的に同じことだと理解できないのは過去の戦術論に意識が囚われてそれ以外の判断ができない状態である為

ビルドアップはショートパスを繋いで相手を崩して前身していく戦術、ロングボールは相手の守備の背後へとボールを送りそのボールを拾い前身していく戦術

これが攻撃側の基本戦術論なのだが、現在のJリーグの守備形式はオープンではゾーン制圧、サイドではレーン制圧が守備側の基本戦術論になっている

つまり、ビルドアップではレーン制圧に対しては対応できるが、ゾーン制圧に対して対応できない、という部分がある

ビルドアップ時にサイドチェンジすることでボールをサイドに寄せて相手をレーン制圧に変更させれば、逆サイドにスペースが空くので高速サイドチェンジ、対角パスなどで逆サイド展開し、スペースを突く、ということができるが、ゾーン制圧状態の場合、サイドチェンジしても逆サイドにも守備がいるのでサイドチェンジによる左右への展開と逆サイドを取る、中央を割る、というビルドアップ戦術の攻略方法が効かない

そもそもなぜゾーン制圧になるか、というと、その前段階の守備戦術としてハイラインプレスがある、前線の守備が相手の守備ライン=コントロールラインにプレスすることでボールロストを誘発してショートカウンターを狙うカウンターを主体とした守備戦術であるが、ビルドアップ側は守備側を「前から剥がす」ということをやっている、守備側の前線が剥がれれば、ライン間にボールを送り、前線ー中盤間のスペースを使って前進する

これがビルドアップの「前から剥がす」という攻撃方法になる

しかし、ゾーン制圧の場合、前線ー中盤ー守備ラインの3ラインが1つのゾーン無いに配置されるので非常にコンパクトであり局面に強い構造になっている

この為にハイラインプレスを呼び込んで剥がす、ということができず、剥がしてもすぐに中盤や守備ラインが顔を出す、という状況になり、前進が不可能、相手の守備ブロックがこちらのゾーン1に密集している場面ではボールの逃がし所が存在しない、将棋で言えば「詰み」ということ

そこでロングボールで守備ラインの裏にあるスペースを使うことで守備ラインを後退させる「後ろを剥がす」ということをやっているのがビルドアップ+ロングボールの今のジュビロの戦術になる

ロングボールの利点としては、広いスペースがある、守備人数が少ない、1v1の場面を多く作ることが出来る、シュートコースが広い、など、攻撃側としては非常に利点の多い攻撃方法になる

1つ目の目的は速攻から得点、という一番シンプルな方法論
もしそれが防がれたとしても、守備ラインを剥がしたことで、守備側の中盤の戻りが遅ければ広いバイタルを得ることができ、ミドルシュートが打ちやすいという2次攻撃にも優位な状態が継続する

更に守備ライン、中盤、前線がそれぞれ離れることでライン間が開く為に後ろに戻ったとしても今度はビルドアップによる前進がやりやすくなる、というビルドアップがやりやすい状況を生む為にロングボールを使う、ということができる

ビルドアップか、ロングボールか、「ではなく」
ビルドアップも、ロングボールも、が「正解」

自陣ビルドアップは相手のハイラインプレスを誘発し、ロングボールによる背後への速攻に良い状況を生み出す
ロングボールに対応しようとして守備ラインを下げればライン間が空いてビルドアップがやりやすい状況が生まれる

どちらの戦術か、ではなく、両方が両方を上手く動かす為の手法

つまりビルドアップ+ロングボールは「表と裏」であって、二つで一つの戦術になっている

これが理解できないと、ロングボールは無駄だ、ビルドアップは引っかけられるだけ、とどちらも否定するはめになる

重要なのは監督や選手がこの戦術の意味を深く理解して相手の状況に応じて使い分けられるようになることだ

例えばGKからのリスタート時が特にそうで、相手がこちらのゾーン1、自陣深い位置まで全体を押し込んだゾーン制圧守備をしている状況でビルドアップでリスタートするようなことはしてはいけない、こういう時は迷わずにロングボールを背後に蹴る事、中途半端に自陣ビルドアップでリスタートするとスペースがないので蹴り出せない、少なくともゾーン2に相手がいるならゾーン3にスペースがあるので蹴り出せる

ロングボールで気を付けるのは常に回収を即座にできる状態にしておくこと、その為に中盤が走って回収に行く必要がある、またバックパスすることに否定的である必要はない、ロングボールを入れて相手の守備ラインを下げさせる、回収して一旦バックパスして前線を引きつける、などライン間を開かせて受けるスペースを作るならビルドアップに可変すればよい

ロングボールの速攻、回収後のミドル、が上手く行くなら得点するか、シュートが外れてゴールキックかCKなどセットプレーに移行する

相手の守備ラインだけでなく、全体がしっかり戻ってブロックを作るならバックパス、サイドチェンジで相手のブロックを広げるようにビルドアップに移行し、ポケット攻略、セットプレー狙いに変更する

この緩急、ロングボール、ミドルシュートは速攻、バックパス、サイドチェンジは遅攻、で使い分ける

相手の反応、対応に応じて自分達で使い分けること、大事になるのは全体がそのタイミングや選択をしっかり共有できること、アイデアではなく、この状況ではどちらを選択する、というルールがはっきりしていて無駄な判断なく全体が1つになって動ける事

サポはチームが何をやっているのかを理解した方が良い、どちらも使えなければJ2もJ1でも戦えない

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