2022年4月19日火曜日

WBの得点力

ジュビロの七不思議の一つ、WBの得点力についての種明かし。

とても単純なことで、ポジショナルプレーのアイソレーションを知っていれば理解できる。
同時に小川航基の得点力も理解できる。

ポジショナルプレーの一つにアイソレーションがある。

ポジショナルプレーには

・量的優位
・質的優位
・位置的優位

があるが、アイソレーションは位置的優位に含まれる。


具体的には

・逆サイドに孤立した選手

を想像すると分かりやすい。


WBの動きにはWGとSBの両方の働きがある。

・中盤サイドでSBの攻撃的役割、中央の味方と一緒に組み立てて相手の守備ラインを突破するボールを入れる事。
・中盤サイドでWGの役割、自分で持ち上がりサイド突破しクロスを上げる事。
・逆サイドで待ち、タイミングを合わせて駆け上がりゴールのファーサイドに入ってくる事。

この3番目の動きがアイソレーションになる。

WBは3バックの時のサイドを担当する選手。
サイドの攻守を1人で担うので負担が大きい。
攻撃時に両方が上がってしまうと幅を取った攻撃が出来るが、逆に3バックの脇を守ることが出来なくなる。
そこでボールサイドのWBはビルドアップに参加して低い位置でボールをコントロールする一方で、逆サイドのWBは相手の守備ラインのスライドを待ってから空いたスペースに上がることで相手の背後を突くことが出来る。

櫻内や小川大貴の場合はアイソレーションでの得点があるが、雄斗の場合は一人でボールサイドのビルドアップの連携を活かして突破し、自ら決めるパターンもある。
ボールキープ力、フィジカルの強さ、上手く相手を手でコントロールして足元にスペースを作るなど色々とテクニックもフィジカルもあるのでそれが出来ている。

これがどう小川航基の話しに繋がるか、というと、

小川航基はCFにこだわっていたが、プレーの質としてはこのアイソレーションに近いテクニック、ポジショニングを局所的にやっている選手という点がセカンドストライカー向きという部分に繋がる。

アイソレーションの本質はボールサイドに相手の守備ラインをシフトさせると同時に視線をボールサイドに引き付けることによって逆サイドを死角にすること。
両サイドをワイドに使える3バック+WBの組み合わせだとこの逆サイドの死角を突いた攻撃がやりやすい。
特に442の4人ラインのブロックの場合、4人では5レーンをカバーできない。
よって、ボールをWBが持つことで相手の守備をボールサイドにシフトさせて逆サイドのアウトサイドのレーンを空けさせることが出来る。

小川航基は背が高く上手く足元にスペースを作れる選手。
ポジショニングも受ける寸前に引いて相手DFの背後に隠れるテクニックを使っている。
これはDFから消える動き。
CFはDFとGKの両方を一度に相手しなくてはならない。
さらに2CBの間にいる場合は囲まれた状態に近い。
そこで2CB間から外側に逃げる動きをすることでマークを瞬間的に外す。
これができるとゴール前でもほぼGKと1対1に近い状態になり、かなり有利な状態になる。

この動きを狭い範囲で出来るから小川はCFが出来るのだが、これを個人ではなく連携でやるのがセカンドトップ。
セカンドトップだとトップが1つ前にいるのでCBがトップに食いつく。
セカンドトップはトップを囮に使えるので2CBの背後に簡単に入ることが出来る。
今まで個でやっていたことをチームとして出来るようになったので小川としては簡単にスペースに入り込むことが出来る。

この動きのセンスがあるのでCFより一つ下のポジションの方がより活きる。
同時に複数の相手をしなくて良いのでより得点が上がる。


黄金期にMFにして100得点を達成した藤田俊哉がこの消える動きが出来た選手。
優秀なFWの多いジュビロに置いてMFで100得点をマークしている異常なセンスを持った選手。
どこからともなく現れて得点するシーンは本当に不思議でまるで忍者のような、まさしくシャドーの選手だった。
ちなみにMFで100得点しているのは藤田俊哉と遠藤。
MFで最初に100得点しているのは藤田俊哉。

スペースを見つけてそのポジションを取るだけではなく、タイミングが重要になる。
こぼれ球を予測して詰める動きが出来る必要がある。
トップがいることでセカンドトップがこぼれ球を処理する回数は多くなる。
鼻の利く選手はやはりポジショニングが良い。
これは経験則から来る予測、経験=データ量、予測=平均値、中央値、で考えることが出来る。
ボールの入ってくる方向によってこぼれる場所がある程度は決まる。
そのこぼれるボールの範囲に対して平均的にみて一番近い距離のポジションを取っていることである程度の確率で最短でボールにアクセスできる。

そもそもポジションというのはそういうデータから導き出された最適位置であり、そこにいることが重要な点。

人もボールも動かすジュビロだとポジションが不特定になりがちだが、動いているようでポジション間を移動しているだけ=ローテーション、という風であれば問題はない。
ポジションで受けたいが相手のマーク、ポジショニングが良い状態だと受けきれない、そういう時にマークを誘導する為にローテーションして別の選手がポジションに入れるようにする。
それがローテーションの意味。
無暗に動いているわけではない。
やはりポジション=最適位置には意味があるのでその場所の取り合いというのがポジショニングには関係する。
それを崩すにはより危険なポジションにボールを置くことで相手を強制的に誘導していく。
相手の守備はより危険な位置を守ろうとするので取りたいポジションを空けざるを得ない。
そうやって徐々に有利なポジションを奪っていく。
ポジションの取り合いとボールの取り合いに目が行き過ぎると、アイソレーションが逆に有利になる。
この辺りは戦術ジャンケンでもあるので、どれが強い、ではなく、どれがどの場面では有利になる、という考えを持たなければならない。

サッカーはボールだけを追っていると負ける。
ボールはどこにでも動けるが人は簡単には動けない。
だから間に合わない。
それを作り出す為にパスを使う。
ボールを囮にしたり、人を囮にして、本命は隠して組み立てる。
高い得点力には必ず明確な理由がある。
それを理解できればもっと楽しく観戦することができる。

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