◆統率と思考
監督の統率に従うことはチーム戦術を徹底する為に必要。しかし、戦況、戦局が戦術の意図しない状態になった時に個人の思考でその穴を塞ぐことが出来ているか。
1.監督・コーチの考える戦術
2.戦況・戦局が戦術とミスマッチ・イレギュラー発生
3.選手の戦術理解度と戦況・戦局認識
4.選手の思考・行動
高い統率度は戦術で選手を縛ってしまう場合もある。この場合、2の戦術と戦況・戦局がミスマッチ・イレギュラーの発生時にどう対応するのかを選手が監督の指示待ちになり、選手個人でその状況を抑え込むことを阻害する。思考の自由度の高い選手は戦況のイレギュラーを理解し、その穴を防ぐ方向に単独で行動できる。もしくは指示を送ってカバーできる。
◆戦術の理解度と戦術の穴の理解度
これは監督・コーチ・選手の全員に関わるが、サッカーはどんな戦術でも必ず穴がある。問題は穴の少ない戦術を使用することと、穴をどう塞ぐべきかを理解しているかどうか。戦術の理解度にはレベルがあり、戦術の使える状況、戦術の利点、戦術の欠点、対応策、とその全てを理解していないと戦術を最大限に発揮できない。
重要なのは監督・コーチが戦術の使える状況を把握した上で使用しているか、戦術の欠点を理解して対応策を準備しているか。これが間違っているとどんな戦術でも通用しない。戦術の意図するものを理解して、その欠点も含めて運用できるレベルになることが必要。その意味で鹿島のように誰が出ても442のスタイルで隙が少なく高いレベルで理解し運用できるという事は非常に重要な事。
ジュビロでは3バックと4バックを別のシステムで運用している。この時点で2つのシステムは分断されており、選手のポジションやタスクが変化してしまう。1つのシステムから3バックと4バックをシームレスに移行でき、即時対応できるポジションがシステムに組み込まれている必要がある。
◆システムの要件
システムの方向性は
1.汎用
2.特殊
汎用はどの状況にも即応しやすく隙の少ないタイプ。特殊は守備特化、攻撃特化など利点も大きいが欠点も大きくなる。どちらを基本にするかはそのチームのカラーによっても違ってくる。
◆システムの変化と運用
ジュビロに必要なものとして、基礎となるシステムの構築がある。1つのシステムから3バック、4バック、カウンター、ポゼッション、ハイプレス、など各種の戦術にシームレスに移行できるシステムだ。同時にそのシステムの弱点の理解とメタ対策の徹底があげられる。汎用的なシステムから特殊なシステムに移行できる形だと対応する幅が広くなるので戦況に応じて変化できる。戦術が高い汎用性を持ち特殊な変化に対応できるとしても、それを利用する監督・コーチ・選手が理解していなければどの戦術の上手くは使いこなせない。高度な戦術を使わず単純な戦術で理解度や対応度の高いチームに仕上げることも一つの選択肢である。選手の入れ替わりが激しいチーム、世代交代が激しいチームなど選手の定着度が低いチームでは単純なシステムの方が選手の習熟度は上がる。高度な戦術の運用は理解度、運用度共に高くなり選手のマッチングや戦術運用の面で難点が出てくる。
◆守備システム
1.ロングカウンター
2.ショートカウンター
3.ハイプレス
ロングカウンターは自陣に引いて守備したのちに少数人数でのカウンターを行う。1トップ、2トップでの縦に早い攻撃で得点する。スペースを作らない守備が必要なので横に広く布陣するが縦の深さに対応できず、相手のハイタワーが中央にいるとセットプレーと同じ形で失点する可能性が高い。相手のSBからのクロスからハイタワーFWが失点パターン
ショートカウンターは中盤に広く網を置いてインターセプトから攻撃に移る。中盤に人数をかける必要がありロングボールで最終ラインから前線までショートカットされると意味がなくなる。
ハイプレスは相手がポゼッションで最終ラインでボールを回す場合に前から相手守備ラインにプレスに行き、パスミス、ボールロスト、インターセプトを狙う。
守備では横幅を重視してライン守備を導入することで安定した守備を導入できる。ライン守備は4人以上でラインを形成する必要がある。ライン守備の欠点はハイボールによるラインの突破。グラウンダーのパスは4人のラインで止めることが出来るがハイボールは止めることが出来ない。ハイボールになった場合の対応としては後ろのラインがボールを落としてセカンドボールを前のラインが回収する事。
ドリブルによるライン突破に対してはボックスを形成。4人がボックスを作ることで前の2人が2対1で捉えられなかった場合も次の2人が止めに入ることが出来る。ボックス型は幅がないのが欠点。中央に関してのみ攻守に汎用的ではある。
442フラットでは4人ラインの2列でボックスの形成もされるので守備面では大きな効果がある。しかし2トップではSBへのプレスが弱いのでSBが引いてゲームメーカーになっている場合はSHがプレスに行かなければならず、そのスペースをさらに使われてSBかCBが剥がされる形が対ポゼッションでの失点パターン。SBからハイタワーFWへのクロスも失点パターン。
442は守備面での効果は高いが縦横に同じように並ぶので攻撃的なパスを使えない。攻める場合はサイドの選手がライン間にずれて斜めのパス交換が出来るように位置を取る必要がある。押し込んだ場合は両SHと2FWの4人が前線でラインを作り裏狙いやドリブル突破からのクロスなどでシュートに行くのが攻撃パターン。
ボックスの変形としてダイヤモンドがあるが、こちらは逆に攻撃的な布陣。4人まとまった中央の制圧力と斜めのパスルートを使った攻撃とボックスの安定感より不安定でも攻守に特徴を出した形。ボックスでは2対1の形になりやすいがダイヤモンドでは逆に1対1、1対2になりやすくなってしまう。両サイドが絞って中央の4人の形ならまだ守備力は高くなるが、サイドに分離してしまうと中央は前後関係になってしまい守備力が極端に下がってしまう。守備時は中央に、攻撃時はサイド展開と使い分けると攻守に運用できる特殊型ともいえる。
安定守備にはボックス+ラインを作る。3421はボックス+ラインのスタイル。中央をボックスにして下辺を4人ラインにする。しかし4人ラインの位置が低くてやはりSBをチェックできないのが欠点。
◆体力と時間のマネジメント
攻撃側はポゼッションによってボールを回しながら体力と時間のマネジメントが可能だが、守備側はプレスにいくと体力を削られ、さらにブロックが作れないのでポジショニングが悪くなる。カウンターを考える場合は守備ライン、ブロック形成が可能な状態という条件付きでプレスに行かないと簡単にボールを入れられてしまう。ハイプレスをするためには前線に3人は必要になる。2人の場合は中央に挟み撃ち、両サイドには単騎で行くことになる。プレス効率としては2人より3人の方がいい。3人だと中央の1人はサイドから中央に戻るボールを狙うことが出来る。中央からサイドに出されるボールはサイド側の1人が狙うこと。
守備側もラインとボックスを上手く利用して体力のマネジメントをする必要がある。攻撃側の体力を削るにはどうすればいいのか。ボールを回させない、パスコースを切ってドリブルのコースのみを空けておき、孤立させて囲んで奪う。ドリブルのコースを空けるという事はサイドにスペースを残しておき、サイドに追い込んで囲む必要がある。そのコースに攻撃側の味方がいない上で囲む必要がある。これは相手の布陣に影響される。サイドの人数が少ない相手なら使えるが、2人3人といる場合には使えない。サイドに人数をかけている場合、中央が薄いことがあるので中央で囲んで奪う。この場合はボックス、ダイヤモンドが有効。
◆クローズドゲームとオープンゲーム
チームの戦術にもよるが、ボールが収まり攻守が決まった形でゲームが展開されるクローズドゲームと、ボールが収まらずに自陣、敵陣を行ったり来たりするオープンゲームとがある。
クローズドゲームの場合、ポゼッション対カウンターで攻守がはっきりする。またゲーム自体も狭い範囲で行われる。クローズドゲームの場合はスピードが遅くなり縦方向にはスペースがないゲームになるので横方向に布陣した方が安定する。一方オープンゲームの場合はどちらもボールを保持しない、できない状態となってゴール前を行ったり来たりすることになる。そもそもの戦況がスコアレス、同点で時間がなく1点勝負などの状況でボールをとにかく相手ゴールに近づけさせるために蹴りだすことが多い。オープンゲームでは中盤がカットされるロングボールが入る場合が多いので中盤よりも前後分断した布陣か縦型の布陣の方が安定しやすい。
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