2018年10月12日金曜日

2018清水戦総括、磐田の今後の展望

磐田が後手後手


4月の清水戦は清水のサイド攻撃で磐田が5バックラインディフェンスでドロー

10月の清水戦は磐田のサイド攻撃で清水のカウンターで1-5


磐田は4月の清水戦で相手のサイド攻撃を防ぐためにはこちらがサイドを攻撃すれば防げる=攻撃は最大の防御、という発想でプラン構築したのかもしれない。清水はその裏をかいてサイド攻撃をさせて裏へのカウンターを決行。戦術プランが後手に回った。


攻撃は最大の防御、という発想はある意味で正しいが別の意味では間違い。サイド攻撃で相手のサイド攻撃を防ぐという発想はいいのだが、だからといってこちらのサイド守備が無くなるわけではない。この点で対カウンター視点が欠けていた。

戦術はじゃんけんと同じで勝ち負けの相性がある。同じフォーメーションでも運用次第で異なる戦術を使い分けることができる。清水は442は変わらずにサイド攻撃とカウンターを運用によって使い分けている。磐田はフォーメーション自体を変えることで戦術を変えている。清水は基本形があり、変化は運用で行っている。磐田はフォーメーション依存でフォーメーションの変化で戦術を変えざるを得ない。


フォーメーション依存から固定フォーメーション運用による戦術対応という考え方にシフトする必要もあるかもしれない。選手の練習時間、フォーメーションの習得時間も関わってくる。誰が入っても変わらない、というスタイルは若手に対しても覚えることが決まっていて習得しやすく習熟度が上がりやすい。個人の能力に頼ったフォーメーションの構成はキーとなる個人が抜けた時点でフォーメーション自体を変えざるを得ない。効果の最大化では個人依存のフォーメーション構築の方が高い効果を得られるが、中長期でみると常に最適化されたフォーメーションを探す難しさや若手の育成、メンバー構成の変化に伴う入れ替えに強いのは固定フォーメーションの方だ。チーム運営で常勝チームを作る場合は後者を必然的に選ぶことになる。磐田の伝統は個人依存のフォーメーション構成で効果を最大化するスタイル。上手く行かない時は壊して一から再構築しなければならない。この時間が無駄になっている。また個人依存になり若手が出られないので育成できない。個人タスク、依存度が高くなりハイペースのスタメン固定で休めなくなり怪我が多くなり離脱してしまう。

磐田は地方中規模のエクセレントチームを掲げているが、今のままだと中位低迷を前提とした波のあるチームとして終わる。10年に1度タイトルに絡むか絡まないか程度。黄金期の再来はあり得ない。常勝不敗チームを作るためには過去の磐田から脱皮しなければならない。チームとして必要なのは安定したチーム力を構築すること。それが観客を呼ぶことになる。常にトップ争い、トップ5を維持できるだけの実力を持つべき。その為には安定したフォーメーションと育成が必要になる。負けない試合運びは重要。カウンターサッカーの守備力と攻撃力のマッチは大勝を呼び込む。清水戦でそれはよくわかる。無駄な攻撃サッカーは全く機能しない。磐田に栄光をもたらしたNBOXも中央攻撃のショートカウンターという現代サッカーの先駆者となったフォーメーション。その場所に立ち返って学ぶべき。

2018清水戦

磐田は3412、清水は442

磐田は両WBを上げて3バックをワイドに展開したサイド攻撃。
清水は両SHを内側に絞って4バックをワイドに展開。

磐田は3バックでサイド守備はWBの戻りのみ。
清水は4バックでサイド守備はSB。

清水はSHを絞って、SBで磐田のWBを迎撃。SBは深い位置にいるのでWBがサイド攻撃で前進し過ぎ=自陣サイド守備が出来ない状態になる。清水はこれを狙っていた。WBが上がった裏のスペースにSHやFWが縦に飛び込んでCB脇を突く攻撃。

磐田は3バックをワイド展開しているので実質1CB+2SBの形。ボランチは攻撃時に前進するので守備専ボランチ1人が残り1CBと縦関係に2人がいるだけ。フィールドの横幅は68mあるので3人で守る場合は34m=半径17mを守ることになる。CB間は34mのスペースがあるのでCB間を突くのは簡単。CBが閉じた場合でもサイドは14mあるので左右CBがマークに来るまでに1~2秒のタイムラグを稼ぐことができる。

カミンスキーが止められないのはCBの壁が無い為にコースを限定できずにほぼフリーな状態でゴールの正面でシュートを打たれるから。3CBで中央に壁があった場合コースを限定できる。

磐田が3412でサイド攻撃したのに対して清水は442でカウンターを狙った。この戦術がピタリと当たって1-5の大差で大敗した。

磐田が3421でワイド攻撃をした場合、WB、CBがサイドに展開するので正面の守備が全く機能しなくなる。さらにOHかボランチのどちらかがサイドに開くので攻撃面でもFWが孤立して中央攻撃、シュートに繋がらない。

清水はSHの金子石毛が磐田のWBとマッチアップしてもフィジカル的にミスマッチして抜かれる+WBを前で止めた場合逆に裏のスペースにCBが展開してカバーされるので有効に使えないという2つのマイナス面をひっくり返した。タフネスで負けるSHを絞って利点のクイックネススピードを生かした縦への攻撃へ利用、サイド守備をSBのみにしたことによって磐田のWBが簡単に清水の深い位置まで前進して裏に大きなスペースを提供した。これをカウンターの起点としてSHが裏に飛び出してCB脇を突いてCBをサイドにおびき出すことに成功。FWはCBのいない正面から自由なコースでシュートを打つことができた。



磐田はどのようにこの罠を攻略すればよかったのか。

清水はサイド守備をSBのみに担当させた。442の弱点はSBCB間のスペース。WBがボールホルダー、クロッサーとして機能させるのではなく、OH、FWと共にレシーバーとして3~4人の前線のラインを構築する。トップ下の中村は中盤4人ラインと2CBに囲まれているので中央では機能しない。WBの開けた中盤サイドへと戻り、WBへの起点のパスを入れるべきだった。清水はSHを絞っていたいので中盤サイドでのチェックは少ない。空いたスペースを使い、WB、FW、OHを使って孤立しているSBをおびき出してSBCB間のスペースにFW、OHが切り込んでサイドから攻略する。相手の罠を利用してその穴をさらに広げるべきだった。中村が下がってWBの裏にいることでカウンターされた時のSH、FWの上がりを一旦止めて前線のWBを戻すためのリトリートにもなる。

機能しない攻撃は使わない。
カウンターされることを前提とした攻撃と守備の両立。
攻撃は連携と密集が重要。

サイド攻撃は一方に戦力が分散してしまう。両方同時に使うことは難しい。サイドチェンジには3~5秒かかるので4人ラインの清水に対しては機能しない。

磐田の3バックの運用は攻撃的過ぎで守備が全く考慮されていない。その為にカウンターされた時は簡単に崩されてしまう。まずこの運用を変更しなければならない。3CBが中央に居ればそれだけで失点は激減する。その分サイド守備を誰が担うのかを考える。WBなのかDHなのか。両WBを攻撃的にするならDHを守備的に。中央攻撃でDHを前に出すならWBを守備的に。一方のサイドだけ攻撃的にするなら逆のサイドを守備的にして攻撃時にスライドして中央に入ってくるようにする。これだけで守備は安定する。

中断期間中にどのように再構築するのか。
勝ち点計算では清水戦が分水嶺だったと思う。この試合で大敗したということは長崎、湘南戦で勝てる可能性は低くなる。残留を考えるなら長崎、湘南戦は勝った上で残りの4試合のうち半分は引き分ける必要がある。

磐田の間違いはたくさんある。個人のフィジカル、特にタフネスに対して評価が低い。テクニカル、クイックネス、ステルスなどに評価が高いが守備面ではハイタワー、タフネス、スタミナ、スピードが重要になってくる。戦術面ではサイド攻撃、ポゼッション、守備軽視と大量失点、攻撃力低下と二重のマイナス。チーム構成面ではベテラン多用、若手軽視。あらゆる面で逆のことをしているためにここまで低迷している。フロントスタッフ監督と運営側は総入れ替え再構築の必要さえ出てくる。しかし総入れ替えし過ぎても過去に上手く行かない部分があった。半分の入れ替えは必要になる。

ジュビロ磐田というチームが強ければ観客も来る。チームが負ければ離れていく。単純なことだ。ビッグネームはいらない。実力のある選手がその実力を発揮できること。まずはこれが第一だ。監督やスタッフはそれができる環境を作り上げること。

2018年10月6日土曜日

361ワイドボックス

____FW____
_OH____OH_
___CHCH___
_DH____DH_
__CBCBCB__


3バック1トップ中盤6人をワイドのボックスにして中央を2枚。2トップのN-BOXを1トップにして中央を2枚に強化。


現代のサッカーはトランジッションが重要になる。攻守の切り替えの速さとフォーメーションの変化で瞬時に最適化された状態になる必要がある。このフォーメーションは中盤の構成を変化させることであらゆる状態に変化可能。初期位置でのスタイルは中盤の優位性を活かしたショートカウンター。サイドを置かない代わりにハーフゾーンにOHDHを置いて中央とサイドの両方に即応できる。中央2枚のCHが中央の一次攻撃を防いでいる間にOHDHのボックスを狭めることで囲んで奪うことができる。CHより前ではFWOHCHの5人で奪い、中盤ではOHCHDHの6人で奪い、後ろではCHDHCBの7人で奪う。中央のエリアは大人数で囲んで奪うことになる。サイドではOHCHDHの3人またはCHDHCBの3人で奪う。サイドでは人数が減るがやはり囲んで奪う形を取る。

このフォーメーションからの変化形は541、3421、3241、343となる。CHが動くことで3421、3241で中盤の4人ラインを作ってショートカウンターを狙う。OHDHが動く場合は守備的な541か攻撃的な343に変化する。変化形の場合はライン守備が基本となる。3ラインのシンプルな構成にすることと、5人ライン4人ラインを作ることで横幅をとることでサイドまでの守備を安定して構築することができる。ライン守備の欠点はハイボールでラインをパスされること。ボックス守備でパサーへプレスをすることでレシーバーへのCBのプレスもより有効になる。

初期位置のボックス状態では中盤、中央の制圧を基本とし、ショートカウンターを狙う戦術。ライン守備の場合は541では堅い守備とロングカウンターを狙う。3421では同じくショートカウンターを。3241では相手陣内での攻撃、343は更に突っ込んだ攻撃になる。ライン守備では中盤4人ラインが固定なのでどの状態でもサイドには1人が展開し守備を担当する。


攻撃面ではボックスを活かしたポゼッション、ラインを活かしたサイド展開と中央へのスルーパス。中央の3CB、2CH、1FWの3ラインを縦に使った速攻。ボックスの幅と深さを活かしたワイドかつ前後のラインを飛ばした攻撃が可能となる。OHDHのサイド展開に寄ってサイドの幅を活かして相手の3ライン守備やボックス守備を回避可能。サイドチェンジによる幅を使った揺さぶりと縦の3ラインを使ったスルーパスでの速攻の両方がマッチする。横幅を使えば3ライン4ラインのスペースを突くことが可能になる。サイドチェンジ+縦ドリブル。横スライド+縦スルーパスと前後左右の幅と深さを使った人の動きとボールの動きの融合が可能。NBOXで行われた攻撃戦術と同じことができる。

NBOXでは2トップだったために中盤中央が1CHとなってOHDHとの連携面で問題が残る。3人ラインにしかならないのでサイドまで対応できない。2CHだと4人ラインになるのでサイドまでカバーすることが可能になる。1トップになったことで決定力は下がるかもしれないが、2CHで中央の守備力だけではなくサイドの守備力も含めて中盤が強化されるので、カウンター時に3トップに移行しやすい。2OHが上がることで3トップ攻撃になる上、2CHの1人や1トップ相手の場合の余ったCB1人が中央攻撃に参加することでさらに攻撃力は上がる。攻撃時に3バックが開いてサイドへ展開するとCBDHOHのサイドに縦3人ラインが構築され一気に縦へのサイド攻撃が可能になる。この場合は2CHを下げて3421に変化しておかないと1CBのみになり守備が危険になる。両サイドを生かして敵陣に入った場合はCBを閉じてCHを上げていく。CHとDHは守備を基本にする。CHは攻撃時に前に出るのでバランス感覚とスタミナが必要になる。DHはサイドの守備力とパス供給。攻撃時はOHが中央に絞るのでサイドからのクロスを担当。OHは攻撃を基本にしつつもプレスバックで囲むこと。攻撃時は中央に絞ってFWとの連携による中央攻撃。

中盤の人数と構成を生かした多彩な攻守に渡る適応力、対応力の高さが戦術の核になる。どの相手に対しても対応可能。CHDHの守備力の高さとバランス感覚は重要になる。CHはスタミナが必要で前後の動きをしっかりコントロールする必要がある。DHは攻撃面で前に出ない分サイド守備とCHの背後のスペースを埋める守備が必要になる。相手を押し込んだ場合は後方、サイドからクロスを上げて中央のFWOHを支援する。

3CBは中央守備を基本としてサイドはDHに任せる。相手が1トップだった場合、一人が前に出てCHの後ろのスペースを消してボールを掻き出すスイーパーとして動く。攻撃時はワイドに広がってビルドアップする。バイタルが空きがちになるのでDHと共にCBの一人はできる限り前に出てスイープできるようにする。特にサイドにボールが振られた時にDHがサイドに出ていくので中央が空きやすくなる。DH一人が残ることになるので空いたスペースに走り込んできた時に対応が後手になる。サイドに出た場合はボックス守備からスムーズにライン守備へと移行して対応した方が無難。5バック=4バック+1で一人がボールホルダーへとプレスすることで3ラインの間のスペース、バイタルを自由に使わせないようにさせる。ボックスからラインへの移行とライン間をコンパクトにするまでのタイムラグがあるのでこの時間で相手にスペースを使わせずにこちらの守備を固める為にスペースにボールが入る前に動き出し、スペースに入った時にはスイープできるようにする。できるならばスペースへのパスに対してインターセプトした時にダイレクトにロングフィードを前線に供給できると速攻カウンターが成立する。ショートカウンターの囲みの失敗からロングカウンターの為にボックス守備からライン守備に移行する時に起こる可能性が高い。CBはスペースへの飛び出しとスイープ、カウンターを常に準備しておく必要がある。

CHが中央で守備と攻撃の両方に参加する。ここが一人だとマンマークされて潰されやすいが2人いることで回避しやすくなる。また周囲にOHDHCBと囲まれているのでボールを逃がしやすい。ポゼッションでも活躍できる。OHDHはサイド守備とサイド攻撃で2人いるので数的にも負けることはない。CHとの連携でサイドを崩して突破可能。もしくはサイドチェンジなどを使ってスペースのあるサイドを突くことができる。ここでもCHが2人いることでパスコースに選択肢があるのでダイレクトなサイドチェンジでもCHを経由したサイドチェンジでも良い。CH経由の場合、サイドチェンジだけではなくFWへのスルーパスが期待できる。3421か3241で幅を使ったビルドアップもでき、OHとFWの連携で中央に3人+CHかDHの上がりで4人目の動きも出てくる。攻撃の厚みが出るので幅の選択肢と追撃の厚みの両方を期待できる。

中盤の構成がWBを置いた361と違うのが大きな特徴。通常は中央に4人ボックスを作りサイドにWBを置くが、この場合WBのスタミナ次第になる。3バックの最大の弱点はサイド守備になる。つまりWBが攻撃的過ぎたり、スタミナが無くなって守備が出来なくなると3バックは終わり。WBを置くとサイドの守備がWB依存になり危険になる。NBOXでDHがWBの代わりにサイド守備をすることでDHがCBの周囲を守る形が出来た。しかし問題点は少ない人数で広いエリアをケアしなければならないこと。そこでCHが降りて守備参加するのがNBOX。すると今度は中央がいなくなってしまう。守備時に2トップは前がかり過ぎ、かつ2OHも浮くので守備に対して有効に機能しなくなる。1トップにして2CHにするとこの点がクリアされる。2CHは点から線になって中央の壁になり、OHDHとの連携で4人ラインを構築できる。NBOXは縦にソリッド過ぎたのでこれを横のソリッドにしたのがこの361ワイドボックスになる。DHがサイドに下がればCHが下がってボランチとして中央を守れる。ボックスとラインの移行、中央の囲み制圧、サイドの制圧共に問題ない。非常に守備的だが中盤の組織的守備からのカウンターを狙うことを前提としつつも他のフォーメーションへの移行のしやすさがトランジットでの優位性を持っている。4バックの攻撃時3バック化などの縦横の複合スライドによるポジション変更は機能面では充足されるが、速度面では問題点がある。特に変化途中でのプレスなどに弱いので3トップでのプレスディフェンスなどでは手を焼く。その点3バックから5バックへの移行はWBやDHの前後の移動だけになるのでトランジット時のポジション変更による隙ができにくい。

ボックス守備の制圧力、ポゼッションの構成力とライン守備の隙の少なさを兼ね備えたフォーメーション。人数の多さと距離の短さから互いにフォローできる距離にあって連携しやすく攻守に機能する。